こんにちは。電動自転車は究極のママチャリである、管理人の「yuri」です。
自転車で旅に出たいと思ったとき、多くの人が憧れるのが伝統的なランドナーですよね。特にアラヤ ツーリストの評判や自分好みのカスタムに関する情報を集めている方は多いのではないでしょうか。
弟分であるフェデラルとの違いや中古市場での選び方、あるいはランドナー特有の悩ましいスタンドやキャリアの取り付け問題など、購入前にチェックしておきたいポイントは山積みですよね。
さらに最近ではホイールが650B化されたことで、タイヤ選びの幅が広がった一方でパーツの互換性について戸惑っている方もいるかもしれません。この記事では、そんなツーリストの魅力を余すところなく語っていきます。
アラヤ ツーリストの評判と特徴:旅するための機能美

日本のランドナー文化を牽引してきた新家工業(ARAYA)が誇る、名車中の名車。それが「アラヤ ツーリスト(Touriste)」です。単なる移動手段ではなく、旅の相棒として愛され続けるこのモデルには、どのような特徴があるのでしょうか。
ここでは、最新モデルのスペックや実際の評判、そして多くの人が悩むフェデラルとの違いについて、マニアックな視点も交えながら徹底的に深掘りしていきます。
フェデラルとの違いを徹底比較
これからランドナーを購入しようとする方が必ずと言っていいほど直面する最大の悩み、それが「アラヤ ツーリスト(TUR)」にするか、それとも弟分である「アラヤ フェデラル(FED)」にするかという選択です。
カタログスペックだけを見れば、変速段数が少し違う程度で、価格差が5万円以上もあることに疑問を感じるかもしれません。しかし、実車を目の前にすると、その違いは「自転車としての格」や「設計思想」に明確に表れていることがわかります。
私が個人的に、そして強く感じている両車の最大の違いは、「所有する喜びを追求した工芸品」か、「使い倒すことを前提とした実用道具」かという点です。
ツーリストは、細部の仕上げや美しさにコストを掛けており、眺めているだけでお酒が飲めるような美学があります。対してフェデラルは、コストパフォーマンスと頑丈さを最優先し、泥だらけになっても気兼ねなく扱えるタフさが売りです。
具体的な違いを、少し専門的な視点も含めて比較表にまとめました。
| 比較項目 | アラヤ ツーリスト (TUR) | アラヤ フェデラル (FED) |
|---|---|---|
| フレーム接合 | ロストワックスラグ溶接 (パイプを繋ぐ継手を使用・高強度で美しい) | TIG溶接 (パイプ同士を直接溶接・ビードが波状になる) |
| ホイール規格 | 650B (27.5インチ) ※2024年モデル〜 (タイヤ選択肢が豊富) | 26x1.50 (HE) または 650B (世界中で手に入るMTB規格がベース) |
| ブレーキレバー | ドロップハンドル用レバー (ワイヤーが上に出るクラシックスタイル) | セーフティレバー付き (ハンドルのフラット部分でもブレーキ可能) |
| フェンダー | アルミポリッシュ (輝きが美しいが、傷や凹みに注意が必要) | 樹脂製またはアルミ調 (割れにくく実用的だが質感は劣る) |
| シートステー | 集合ステー (シートピン周りの造形が凝っている) | 巻きステーなど (シンプルで機能的な作り) |
| 価格帯 | 約120,000円〜140,000円 | 約70,000円〜85,000円 |
特筆すべきは、やはりフレームの「ラグ」です。ツーリストのヘッドチューブやシートクラスターには、ロストワックス製法で作られた精密なラグが使われています。これは単なる飾りではありません。パイプとパイプを繋ぐ部分の応力を分散させ、フレームの寿命を延ばす効果がある伝統的な工法です。そして何より、ラグの輪郭を際立たせるような塗装の仕上げは、クラシックな自転車ファンにはたまらない魅力です。
どちらを選ぶべき?
【ツーリストがおすすめな人】
・長く愛着を持って乗りたい、いつかは日本一周をしてみたい。
・「美しい自転車」が好きで、ピカピカに磨く時間も楽しみたい。
・予算はある程度許容でき、安っぽさを避けたい。
【フェデラルがおすすめな人】
・大学のサイクリング部などで、ハードに使い潰す予定がある。
・盗難リスクのある場所(キャンパスや街中)に長時間駐輪する。
・とにかく予算を抑えて、浮いたお金でキャンプ道具を買いたい。
フェデラルも素晴らしい自転車ですが、「後からツーリストのような見た目にカスタムしたい」と思っても、フレーム自体の構造が違うため不可能です。迷ったら、無理をしてでもツーリストを選んでおいたほうが、後々の満足度は高いと私は思います。
650B化された最新スペック
ここ最近のランドナー界隈で、最も衝撃的かつ歓迎すべきニュースがこれです。長年、日本のランドナー(特にアラヤや丸石エンペラーなど)は、「650A(26x1-3/8)」という日本独自の規格を採用し続けてきました。これはかつて、日本のどこでも修理ができるように「ママチャリのタイヤ」と互換性を持たせたための知恵でした。
しかし時代は変わり、スポーツ自転車用の高性能なタイヤにおいて、650A規格はほぼ絶滅危惧種となってしまいました。選べるタイヤは「パナレーサー コルデラヴィ」くらいしかない...という状況が長く続いていたのです。これでは、タイヤを変えて走り味を変えるという楽しみが得られません。
そこでアラヤが決断したのが、2024年モデル頃からの「650B(27.5インチ)」規格への完全移行です。これは、新家工業が「ランドナーを過去の遺物にせず、現代のグラベルシーンとも共存させる」という強い意志の表れだと私は感じています。
650B化のメリットとは?
この変更による恩恵は計り知れません。まず、世界的なグラベルロードブームのおかげで、高性能な650Bタイヤが選び放題になりました。例えば、舗装路を軽快に走りたいならスリックタイヤ、林道を攻めたいならブロックタイヤ、その中間を行くセミスリックなど、用途に合わせてタイヤを交換できるようになったのです。
また、650Bはエアボリューム(空気の量)を多く確保できるため、クッション性が抜群に良くなります。荷物を満載したツーリングでは、路面の段差や荒れたアスファルトからの突き上げがライダーの体力を削っていきますが、太めの650Bタイヤ(例えば42mm幅など)を履くことで、まるで魔法の絨毯に乗っているかのような快適性を手に入れることができます。
ETRTO(エトルト)の話
少しマニアックですが、タイヤサイズを見分けるときは「インチ」ではなく「ETRTO」という数値を見ましょう。
・旧モデル(650A):ETRTO 590mm
・新モデル(650B):ETRTO 584mm
この「6mm」の差は決定的です。互換性は全くありませんので、タイヤやチューブを買うときは必ず確認してくださいね。
(出典:新家工業株式会社『ARAYA Bicycle Project』http://araya-rinkai.jp/)
実際の乗り心地と評判
では、実際にアラヤ ツーリストに乗るとどのような感覚なのでしょうか。多くのオーナーさんや私自身の経験から言えるのは、「バネ感のある、しっとりとした乗り心地」という表現が最も適しています。
最近主流のアルミフレームやカーボンフレームのロードバイクは、ペダルを踏んだ力がダイレクトに進む力に変わる「硬さ」があります。これは速く走るには有利ですが、長時間の旅では体が疲れてしまいます。
一方でツーリストに使われている「4130クロモリ」という鉄素材は、適度なしなりを持っています。ペダルを踏み込むと、フレームが一瞬たわんで、その反発力でグイッと進む感覚。これが「バネ感」です。
絶妙なフォークの設計
特に注目してほしいのが、フロントフォーク(前輪を支える部分)の形状です。ツーリストのフォークは、先端に向かって緩やかなカーブを描いて曲がっています(ベントフォーク)。このカーブがサスペンションのような役割を果たし、路面からの微振動を吸収してくれるのです。
また、ホイールベース(前輪と後輪の距離)が長く設計されているため、直進安定性が非常に高いのも特徴です。ふらつきにくく、ハンドルに軽く手を添えているだけで真っ直ぐ進んでくれる感覚は、重い荷物を積んで峠を下るときなどに絶大な安心感をもたらしてくれます。「速く走ることは苦手だけれど、いつまでも走っていたくなる」そんな不思議な魅力がツーリストにはあります。
ランドナーとしての魅力
機能面だけでなく、ツーリストが持つ独特の「美学」についても語らせてください。現代の効率優先のデザインとは一線を画す、ノスタルジックで温かみのある佇まいは、所有者の心を豊かにしてくれます。
まず目を引くのが、タイヤを覆う美しい泥除け(フェンダー)です。ツーリストには、標準でアルミ製のポリッシュフェンダーが装備されています。安価なプラスチック製とは違い、金属特有の深みのある光沢があり、太陽の光を反射してキラキラと輝きます。
雨上がりの道を走っても背中が汚れないという実用性はもちろんですが、このフェンダーをピカールなどの研磨剤で磨き上げることが、多くのランドナー乗りの「儀式」となっています。

さらに、フレームの各所に配置された「ダボ穴」や「直付け工作」も見逃せません。ポンプを固定するための「ポンプペグ」、輪行時にチェーンを引っ掛けておくための「チェーンフック」など、旅に必要な機能がフレーム自体に溶接されています。後からバンドで無理やり取り付けるのではなく、最初から「旅するために生まれた」という意思を感じさせるディテール。これこそが、ツーリストが長年愛され続ける理由なのです。
採用パーツとダブルレバー
ツーリストのハンドル周りを見て、「あれ?変速レバーがない?」と驚く方もいるかもしれません。そう、ツーリストは今どき珍しい「Wレバー(ダブルレバー)」を採用しているのです。
変速レバーはハンドルの手元ではなく、フレームの下パイプ(ダウンチューブ)に取り付けられています。
変速するたびに、いちいちハンドルから片手を離して、フレームの方へ手を伸ばさなければなりません。「なんて不便なんだ!」と思いますよね?でも、この「不便さ」こそが、ツーリストの味わいであり、愛される理由でもあるのです。
なぜ今さらWレバーなのか?
あえてWレバーを採用しているのには、合理的な理由もちゃんとあります。
第一に、「構造が単純で壊れにくい」こと。
旅先、特に海外や人里離れた山奥で変速機が故障したら致命的です。複雑なSTIレバー(ブレーキと変速が一体化した現代のレバー)は、内部機構が壊れると現場での修理はほぼ不可能です。しかしWレバーなら、構造がシンプルなのでトラブルに強く、最悪の場合でも調整次第でなんとかなることが多いのです。
第二に、「ハンドル周りがスッキリする」こと。大きなフロントバッグを取り付ける際、STIレバーだと変速ワイヤーがバッグに干渉して邪魔になることがよくあります。Wレバーならハンドル周りに変速ワイヤーがないため、どんなに大きなバッグでもスマートに取り付けられます。
そして採用されているコンポーネントは「Shimano Claris(クラリス)」の8速仕様。最新の11速や12速ではなく、あえて8速を選んでいる点も通好みです。8速のチェーンは厚みがあって切れにくく、世界中の田舎の自転車屋さんでもパーツが手に入りやすい。まさに「世界を旅するスペック」と言えるでしょう。
アラヤ ツーリストの購入ガイド:失敗しない選び方とカスタム

さて、魅力たっぷりのアラヤ ツーリストですが、いざ購入するとなると、特殊な自転車ゆえの悩みも出てきます。
ロードバイクやクロスバイクとは勝手が違う部分が多く、「キャリアは何が付くの?」「スタンドはどうすればいい?」といった、買ってから気づきがちなポイントを詳しく解説していきますね。
旅仕様へのカスタム方法
ツーリストは「素の状態(完成車)」でも十分に美しい完成された自転車ですが、そこに荷物を積んで旅に出るための装備を追加していくことで、真の姿になります。自分だけの旅仕様にカスタムしていく過程は、プラモデルを作るようなワクワク感があります。
まず最初に検討したいのは、バッグ類の導入です。ランドナースタイルの王道といえば、やはり「フロントバッグ」でしょう。

ハンドルバーに吊り下げ、フロントキャリアで下から支えるタイプの四角いバッグです。オーストリッチ(Ostrich)などの帆布製バッグを合わせると、一気にクラシックな雰囲気が増します。地図を入れるマップケースが上面に付いているものが多く、スマホのナビも便利ですが、紙の地図を見ながら迷い道を楽しむのもツーリストらしい旅のスタイルです。
サドルとバーテープのコーディネート
また、体に触れる部分のカスタムも重要です。純正のサドルやバーテープも悪くありませんが、多くのオーナーさんが納車と同時に、あるいは少し乗ってから交換するのが「革サドル」です。
イギリスのBrooks(ブルックス)社の「B17」というモデルが定番中の定番。最初は板のように硬くてお尻が痛くなることもありますが、専用のオイルを塗り込み、乗り続けることで、自分のお尻の形に完全にフィットする「世界に一つだけの椅子」に育ちます。バーテープも合わせて革製やコットン製にすると、統一感が出て非常にカッコいいですよ。
荷台とキャリアの選び方
キャンプツーリングや長期間の放浪旅を考えているなら、キャリア(荷台)の取り付けは必須です。ツーリストには前後にキャリアを取り付けるためのダボ穴が完備されていますが、何でも付くわけではありません。ここで注意したいのが、日東(Nitto)などのキャリアを選ぶ際の規格と互換性です。
ランドナーの顔とも言えるのが、フロントキャリアです。特に「キャンピー(Campee)」と呼ばれるサイド枠付きのキャリアは憧れの装備ですが、購入時には細心の注意が必要です。
要注意!650B化によるキャリアの罠
先ほどお話ししたように、最新のツーリストは「650B」ホイールになっています。しかし、市場に出回っているランドナー用キャリアの中には、旧来の「26インチ(650A)」用や「700C」用が混在しています。
もし26インチ用のキャリアを650Bのツーリストに付けようとすると、タイヤの外径が大きくなっているため、キャリアとタイヤが接触してしまったり、高さが足りずに水平に取り付けられなかったりするトラブルが発生します。必ず「650B対応」を謳っているキャリアや、脚の長さを調整できるアジャスター付きのモデルを選んでください。迷ったらショップで現物合わせをするのが一番確実です。
リアキャリアに関しては、比較的汎用性が高いですが、泥除けとの干渉を避けるために、取り付け金具(ステー)の曲げ加工が必要になるケースも多々あります。こういった「ポン付けできない」部分も含めて、工夫して取り付けるのがランドナーカスタムの楽しみ方(苦しみ方?)でもあります。
スタンド取り付けの注意点
これはツーリスト乗りの永遠のテーマであり、最も頭を悩ませる問題かもしれません。「スタンド、どうする問題」です。ママチャリやクロスバイクなら当たり前についているキックスタンドですが、ツーリストには標準装備されていません。
「じゃあ、適当なセンタースタンドを買って付ければいいや」と考えるのは非常に危険です。ここに大きな落とし穴があります。
クロモリフレームは「薄い」
ツーリストのフレームパイプは、軽量化としなやかさを出すために、中央部分が非常に薄く作られています(バテッド加工)。一般的なセンタースタンドは、フレームのチェーンステーを上下から金属プレートで挟み込んでボルトで締め上げる構造になっていますが、これをツーリストで行うと、締め付ける力に耐えられず、パイプが潰れて凹んでしまうリスクが高いのです。
もしどうしてもスタンドを付けたい場合は、以下の方法を検討してください。
- リアアクスル固定型: 後輪の車軸部分に取り付けるタイプ。フレームを挟まないので安全ですが、見た目は少しスポーティになります。
- チェーンステー挟み込み型(保護付き): ゴム板などを厚めに挟んで、トルク管理を慎重に行いながら取り付ける方法。ただし自己責任です。
- 携帯スタンドの使用: 「アップスタンド(Upstand)」のような、停車時だけ差し込んで使う折りたたみ式のスタンドを持ち歩く。撮影時などに便利です。
多くのベテランランドナー乗りは、「スタンドは付けない」という選択をしています。ガードレールや木、壁にサドルやハンドルを立てかける。これならフレームを傷める心配もなく、見た目も美しいまま維持できます。「不便を楽しむ」精神はここでも試されるわけですね。
中古市場の相場と注意点
現行モデルの新車価格は12万円〜14万円前後(税込)。「ちょっと予算オーバーだな…」という方は、中古市場を探すこともあるでしょう。メルカリやヤフオクでの相場は、状態にもよりますが、大体40,000円〜80,000円前後で取引されていることが多いです。

しかし、ツーリストの中古車選びには、他の自転車にはない「致命的な罠」が存在します。それが、記事の前半でも触れた「年式によるホイール規格の違い」です。
中古購入のチェックリスト
1. タイヤサイズの確認(最重要)
タイヤのサイドウォールを見てください。「26 x 1-3/8」と書いてあったら、それは旧モデル(650A)です。街乗りなら問題ありませんが、最新のグラベルタイヤを履きたいなら避けるべきです。現行規格なら「27.5 x 1.50」や「650 x 42B」、「584」といった表記があります。
2. エンド幅の規格
古いランドナーはリアのエンド幅(ハブの幅)が126mmだったり130mmだったりと異なります。現行は135mmが主流になりつつあります。古い規格だと、ホイールが壊れたときの交換部品探しに苦労します。
3. フレーム内部のサビ
クロモリ(鉄)の大敵はサビです。外見がきれいでも、シートポストが固着して抜けない、フレーム内部が錆びているという個体もあります。可能ならシートポストがスムーズに動くか確認させてもらいましょう。
アラヤ ツーリストと楽しむ旅
ここまで、アラヤ ツーリストのスペックやカスタム、注意点について長々と語ってきましたが、結局のところ、この自転車の一番の魅力は「自由」であることだと思います。
スピードを競うわけでもなく、効率を求めるわけでもない。ただ、自分の行きたい場所へ、自分のペースでペダルを回す。荷物を満載にして、峠を越え、知らない町でコーヒーを沸かして飲む。そんな映画のようなワンシーンを現実に変えてくれる力が、この自転車にはあります。
移動手段にお金をかける際、例えば高級ミニバンのアルファード 残クレ 割合やリセールバリューを気にして計算機を叩くのも一つの賢い選択ですが、一生モノの相棒となるツーリストを手に入れて、自分の脚で風を切って旅に出るほうが、もしかしたら精神的な豊かさは大きいかもしれませんね。車検もガソリン代もかかりませんし、何より「エンジンの調子」は自分の体調次第、というシンプルさが心地よいのです。
あなたもアラヤ ツーリストと一緒に、地図にない道を探しに行ってみませんか?それはきっと、人生を少しだけ豊かにしてくれる冒険の始まりになるはずです。


